1.『鍛える』ことを追求した先で気づいた、身体の土台
LOX.TOKYO代表の仲座さんは、もともとボディメイクの世界からキャリアをスタートしました。
自身もボディビル競技でプロを目指し、筋肉をつけ、身体を強くすることを追求していたといいます。
しかし現在のLOX.TOKYOは、『とにかく鍛える』という考え方とは大きく異なります。
その変化のきっかけになったのが、呼吸について学ぶセミナーでした。
『呼吸のセミナーを受けたときに、“自分ってこんなに呼吸できてなかったんだ”って気づいたんですよ。めちゃくちゃ呼吸が浅かったんです』
呼吸に目を向け、身体へのアプローチを変えていくと、自分自身の身体の調子にも変化を感じるようになったといいます。
それまでの仲座さんにとって、身体を変えることは『強くなること』に近いものでした。
誰かより優れていること。
筋肉をつけること。
目に見える形で身体を変えること。
しかし身体について学び続ける中で、筋肉をつける以前に見るべき『土台』があることに気づいていきます。
『ボディメイクトレーニングをしていった中で、“もっと土台が必要だったんだな”っていうのに気づいて、今の形になった感じですね』
だからLOX.TOKYOでは、最初から重いものを持つとは限りません。
呼吸から始めることもあれば、ピラティスを行うこともある。
身体を整えたうえでストレングストレーニングへ進むこともあります。
鍛えることを否定しているのではありません。
むしろ、仲座さん自身も、小坂さんも、さみらさんも、身体を追い込むほどトレーニングに打ち込んできた経験があります。
その両方を知っているからこそ、
『今、この人に本当に必要なのは何か』
というところから考える。
そこがLOX.TOKYOのスタート地点です。
2.『自分の身体は、自分のもの』と思える感覚を取り戻す
取材の中で、仲座さんが何度も口にしていた言葉があります。
『身体所有感』です。
簡単に言えば、自分の身体を『自分自身のもの』として感じられている感覚のこと。
仲座さんは、日々多くのお客様を見ていると、この感覚が薄くなっている人が少なくないと感じるそうです。
『自分の身体を、ロボットみたいに扱っちゃう人が、このストレス環境の中ではどうしても出てくると思うんですよね』
首や肩が張っていても、それが当たり前になって気づかない。
疲れていても、自分では疲れていることが分からない。
身体から出ている小さな変化を、そのまま通り過ぎてしまう。
だからLOXでは、身体を変えることと同じくらい、『身体に気づけるようになること』を大切にしています。
実際に通っているお客様にも変化が表れていると、さみらさんは話します。
『姿勢が変わったとか、痩せたとか、そういう見た目の変化よりも、“昨日より寝られた”とか、“前回のセッションのときより寝つきが良くなりました”とか、自分の身に起こっている変化を言葉にしてくれる方が圧倒的に増えました』
身体の変化そのものだけではありません。
『自分の変化に自分で気づいた』ことも、一つの変化です。
LOX.TOKYOでは、『一人ひとりの身体リテラシーを高め、身体との新しい向き合い方を提案する』ことをコンセプトにしています。
では、身体リテラシーが高まった先に何があるのでしょうか。
仲座さんが話してくれたのは、ジムの話を少し超えた言葉でした。
『“気づきの多い人生を歩む”っていうことを、すごく自分の中で大事にしていて』
身体の変化に気づく。
今までできなかったことができるようになったことに気づく。
自分自身に余裕ができれば、周囲のことにも気づけるかもしれない。
『気づきの多い人生って幸せだよねって。気づくことで思いやりもできてくると思うんですよ』
LOXが目指している『身体リテラシー』は、単に身体に詳しくなることではありません。
自分自身の身体を入り口に、自分の状態を知り、自分自身との付き合い方を少しずつ変えていく。
その考え方が、LOX.TOKYOの根底にあります。
3.感覚だけでも、数字だけでもない。データを身体への気づきにつなげる
LOX.TOKYOでは、感覚だけに頼らず、身体の状態を客観的に見ることも大切にしています。
自律神経解析、血液検査、栄養解析などを通じて身体状態を可視化し、ピラティスやストレングストレーニングなどを組み合わせています。
取材時には、自律神経の状態を見るために使用している測定機器も見せてもらいました。
指をセンサーに挟み、一定時間安静にすることでデータを確認していきます。
ただ、LOXにとって重要なのは『数字を見ること』そのものではありません。
『自分では“今こういう感覚なんだよな”と思っていても、実際にはそうでもなかったりする。そのすり合わせができると、“今の感覚ってこういう感じなんだ”って分かってくる』
感覚とデータを照らし合わせる。
その繰り返しによって、
『今日は少し疲れている』
『いつもより身体が緊張している』
『前より身体が楽になっている』
といった、自分の状態を認識するための材料を増やしていきます。
そして、身体を見る方法も一つではありません。
ピラティス。
トレーニング。
呼吸。
栄養。
必要に応じて理学療法士とも連携する。
代表一人がすべてを見るのではなく、それぞれの専門性を組み合わせています。
その幅が特に生きるのが、過去にパーソナルジムへ通ったものの、思ったような結果につながらなかった人です。
仲座さんは、今後もっと届けたい相手として『セカンドオピニオン、サードオピニオンで来る人』を挙げていました。
たとえば、『脚を細くしたい』と相談したところ、筋力トレーニングを中心に行い、思っていた変化と違う結果になってしまったケース。
LOXでは、その人の身体を見ながら、背骨の状態や身体の使い方など、筋肉以外の部分まで含めて考えます。
『もっと見ないといけないところがあるよねって。土台のところが抜け落ちている人は多いので、そこを変えられるのが自分たちの強みだと思っています』
『何をするか』から入るのではなく、
『なぜ今の状態になっているのか』
から考える。
それがLOX.TOKYOのオーダーメイドです。
4.音・香り・光まで。入った瞬間から始まるLOXの身体づくり
LOX.TOKYOを訪れてまず印象に残ったのは、一般的なパーソナルジムとは少し違う空気です。
入口からトレーニングスペースへ向かう空間は暗く、照明も強くありません。
仲座さんによると、この入口のつくりも後からあえて加えたものだそうです。
『入り口から入ってきて、まず視覚の緊張のトーンを落としてあげる。常に緊張されている人がやっぱり来るので』
照明だけではありません。
香り。
音。
空間のつくり。
トレーニング中に使用する音楽も、その日の内容によって変えています。
店内には、耳で聞こえる範囲だけでなく、可聴域外も含む音を出す特殊な音響設備も導入されています。
LOXではそれらも含め、身体と向き合いやすい環境をつくるための一つの要素として活用しています。
『音・香り・光、細部にまでこだわり抜いた空間』というコンセプトは、単なる内装上の高級感をつくるためではありませんでした。
LOXを訪れるお客様には、経営者や責任ある立場にいる人も多いといいます。
仕事中は常に判断を求められる。
上からも下からも頼られる。
休んでいるつもりでも、頭の中では仕事をしている。
仲座さんが特にLOXを届けたいと考えているのも、そんな『休み方が分からない人』です。
『休まる場所がないじゃないですけど、そういう方に来ていただいて、すっきりして帰ってもらう。リセットしてもらうような感覚ですね』
もちろん、LOXはリラクゼーション施設ではなくパーソナルジムです。
必要であれば身体を鍛える。
筋力をつける。
ピラティスも行う。
だからこそ面白いのは、
『頑張るために、さらに頑張らせる』
だけではないことです。
入口から少しずつ緊張をほどき、自分の身体を見るところから始める。
空間そのものまで含めて一つの体験として設計されていました。
5.一人のトレーナーではなく、チームだからできること
LOX.TOKYOは、もともと仲座さんが『ジムをつくりたい』と思って始まったわけではありません。
フリーランスのトレーナーとして活動していた当時は、固定費も抑えられ、事業として十分に成立していたといいます。
それでも店舗をつくった理由は、『一人でできることには限界がある』と感じたからでした。
『優秀なトレーナーはいっぱいいるんですけど、組織でもっといいことができないかな、もっと貢献できることはないかなって』
自分自身がトレーニングによって人生が変わった。
だから、それをもっと多くの人へ返していきたい。
一人でできる人数、一人で持てる専門性には限界があります。
そこで集まったのが、現在のLOX.TOKYOのメンバーです。
小坂さんは、大型フィットネスクラブやパーソナルジムでの経験を持ち、ストレングストレーニングとピラティスの両方に対応。
さみらさんは、自身も競技の世界に深く入り込み、日本一を経験した一方で、心身の調子を崩した経験をきっかけに、ピラティスやボディワークへ学びを広げてきました。
それぞれが同じ経歴を持っているわけではありません。
だからこそ、仲座さんはチームについてこう表現します。
『みんな強み弱みがある中で、そのデコボコが埋まるようなチームになっていると思います』
また、店舗を持ったことで、他のトレーナーが担当するお客様やセッションについて話し合う機会も増えました。
一人で活動していれば出会わなかったケースを知ることができる。
自分にはなかった考え方を、別のメンバーから学べる。
仲座さんは、店舗をつくってから『スタッフのトレーナーとしての伸び率もすごい』と感じているそうです。
そして、学び続けることそのものも、LOXの文化になっています。
『トレーナーって、明日からトレーナーですと言えばできてしまう職業でもあると思うんです。でも、やっていることは人の身体に関わるすごく大事なこと。だから学びを止めてしまったらどうなのって、自分の中では思うんですよね』
自分が知っている方法を提供するのではなく、
目の前の人の悩みに応えるために、自分たちの引き出しを増やし続ける。
LOX.TOKYOのオーダーメイドは、設備やメニューだけではなく、このチームの学びによってつくられています。
麻布十番で、自分の身体ともう一度向き合いたい人へ
取材前、LOX.TOKYOの公式サイトを見たときに印象に残ったのは、『身体リテラシーを高める』という言葉でした。
ただ、実際に話を聞いてみると、その意味は想像していたよりも広いものでした。
筋肉をつける。
痩せる。
姿勢を変える。
そうした目に見える成果も、もちろん大切です。
しかしLOXが目指しているのは、その少し手前にある、
『自分の身体が今どうなっているかに気づけること』
なのだと思います。
仲座さん自身も、最初からその考え方だったわけではありません。
ボディビルでプロを目指し、他者と比較し、強くなることを求めてきた。
小坂さんも、『身体を痛めつけることが正義』と思うほどトレーニングをしてきた。
さみらさんも、自分を追い込むことを美徳だと考え、競技で日本一までたどり着いた経験があります。
だから、筋トレを否定しない。
強くなりたい気持ちも分かる。
見た目を変えたい気持ちも分かる。
そのうえで、
『その前に、もっとできることがあるかもしれない』
と考えているチームです。
取材の最後、小坂さんはこう話していました。
『ここには、本当に身体が痛くなるまでトレーニングをやったメンバーも揃っているので、どっちの思いも分かると思います』
筋トレが好きな人にも。
パーソナルジムに通ったけれど、しっくりこなかった人にも。
最近、疲れや身体の変化が気になり始めた人にも。
『自分の身体について、もう少し知ってみたい』
そう思ったときに、一度相談してみてほしいジムです。



