夕方になると、以前より疲れを感じるようになった。
仕事そのものはまだまだできる。でも一日を終える頃には余力がなく、食事に出かけたり、家族との時間を楽しんだりする気持ちまで削られてしまう。
体重が大きく増えたわけではないのに、鏡を見ると以前とは身体のラインが違う。
40代を過ぎると、「痩せたい」「筋肉をつけたい」だけでは説明しきれない身体の変化が、少しずつ出てきます。
高輪台にあるパーソナルジム「Warp」の代表・下里慶さんに話を聞いていると、そんな40代以降の身体づくりについて、とても印象的な言葉が出てきました。

「疲れないって、最強ですよね」
今回の取材で、最も記憶に残った言葉です。
Warpが目指しているのは、単に体重を減らしたり、筋肉を大きくしたりすることではありません。
仕事を終えたあとにも余力があり、休日にはやりたいことを楽しめる。この先も、自分の身体で人生を動かしていける。
身体づくりを通して、そんな状態をつくっていくことです。
そしてもう一つ。
実際に下里さんと話をして強く感じたのが、この人なら身体を任せてもいいかもしれないと思わせる、暖かさと誠実さでした。
パーソナルトレーニングは、身体のことを長く相談するサービスでもあります。
だからこそ、何を教えてくれるかと同じくらい、誰に身体を任せるのかが重要なのだと思います。
40代からは、「何kg痩せたか」だけで身体を考えなくていい
Warpに通うお客様は40代後半が一つのボリュームゾーンで、取材時には75歳までのお客様が通っているといいます。
もちろん、痩せたいという目的で訪れる方もいます。
ただ、下里さんは体重を落とすだけで身体づくりを終わらせません。
痩身を目的とする場合でも、数値と同時に「見た目」を意識して取り組んでいると話していました。
40代、50代になると、ただ細くなればいいというものでもなくなってきます。
せっかく身体を変えるのであれば、綺麗に見えるだけでなく、以前より疲れにくくなり、日常生活でも動きやすい身体にしたい。
下里さんが大切にしている「疲れない体」と「機能的な体」という考え方は、まさにそこにつながっています。
「筋トレは、日常動作を因数分解したもの」
取材中、下里さんから面白い表現が出ました。
「筋トレは、日常動作を因数分解したもの」
という言葉です。
トレーニングでは、脚や背中など、身体の動きを一部分ずつ取り出して鍛えていきます。
ただ、実際の生活では、それらを別々に使うわけではありません。
立ち上がり、歩き、荷物を持ち、そのまま一日を過ごす。
下里さんは、トレーニングによって切り取った動きをもう一度統合し、普段の生活で使える身体にしていくことを意識しています。
筋トレのために身体をつくるのではなく、人生で身体を使うためにトレーニングする。
話を聞いていると、Warpの身体づくりはその考え方に近いように感じました。
忙しい人ほど、「疲れない身体」の価値は大きい
Warpには経営者のお客様も多くいます。
下里さんによると、日常的にストレスが大きく、血圧が高めの方も少なくないといいます。だからこそ、筋力だけではなく身体全体の健康を考え、有酸素運動を取り入れることもあるそうです。
朝から判断を重ね、移動や会食が続き、仕事が終わっても頭のどこかでは会社のことを考えている。
そんな生活を続けている人にとって、体力は単なる運動能力ではありません。
夕方になっても集中力を保てることや、仕事を終えたあとに自分や家族のための時間を残せることにもつながります。
「疲れない身体」は、仕事を頑張るためだけの身体ではありません。
仕事をしたあとにも、自分の人生を残しておくための身体です。
HYROXへの挑戦も、「疲れても動ける身体」を考えたから
下里さんは、フィットネスレース「HYROX」にも挑戦しています。
もともとは「楽しそう」という気持ちがありましたが、もう一つ大きかったのが、Warpの考える身体づくりとの親和性でした。
「疲れない体」と「見た目を整える」という考え方に、HYROXは非常に近いと感じたそうです。
意外だったのは、下里さん自身、ランニングがあまり好きではないことでした。
それでも挑戦したことで、有酸素運動に対する見方が変わり、その経験が現在の指導にも活かされています。
自分が得意なことだけを教えるのではなく、自分自身でも試しながら、良いと思ったものを取り入れていく。
この姿勢にも、下里さんのトレーナーとしての誠実さが表れているように感じます。
何度も身体づくりに挑戦してきた人に、いきなり「正解」を押しつけない
ここからが、取材をしていて特に下里さんらしいと感じた部分です。
Warpには以前、自分自身でさまざまなダイエット方法を試してきたものの、なかなか結果につながらず、一人で悩んでいた女性のお客様が訪れたことがありました。
こうした方に対して、下里さんがまず大切にしているのは、特殊なトレーニング方法を提示することではありません。
先に、安心してもらうことです。
これから何をするのかをきちんと説明し、言葉遣いにも気を配る。
そうした小さな積み重ねを通して信頼関係をつくることが、方法論よりも前に大切なのだと話していました。
そのうえで、結果を出していく。
下里さん自身、「すごくシンプルだけれど、めちゃくちゃ大事」と話しています。
派手な話ではありません。
でも身体を任せる立場になって考えると、この「当たり前を丁寧にやってくれること」は、とても大きな安心材料です。
「信頼って何ですか?」と聞いてみた
取材中、下里さんが何度か「信頼関係」という言葉を使っていたので、あえて聞いてみました。
「下里さんにとって、信頼って何だと思いますか?」
少し考えたあと、返ってきたのは、

「相手を尊重していることかもしれないですね」
という言葉でした。
ただ丁寧に接するという意味ではありません。
その根底に、本当に「この人の役に立ちたい」という気持ちがあり、それが少しずつ相手に伝わることで信頼になっていくのではないかと話します。
実際に取材をしていて、この言葉にはとても納得感がありました。
下里さんは、自分の知識や実績を強く見せようとするタイプではありません。
こちらの話を聞いて、少し考えて、自分の言葉で丁寧に答える。
取材中、終始流れていたのは、とても穏やかで暖かい空気でした。
パーソナルトレーニングでは、「昔より動けなくなった」「また太ってしまった」といった、自分では少し話しづらい身体の変化も相談することになります。
だからこそ、弱い部分まで安心して話せる相手かどうかは、ジムを選ぶうえで意外と大切なのだと思います。
経験を重ねても、「自分を過信しない」
もう一つ、下里さんの誠実さを強く感じた答えがありました。
医師など、身体について詳しい方からも信頼される理由を尋ねたときです。
そこで返ってきたのは、
「自分を過信しすぎないこと」
でした。
約10年トレーナーを続けてきた人なら、自分の知識や経験を強みとして語っても不思議ではありません。
しかし下里さんは、身体は角度を変えればさまざまな見方ができるからこそ、一つの原因に決めつけず、お客様と会話しながら探っていくことを大切にしていると話します。
知識があることと、すべて分かったつもりになることは違う。
経験を積んだからこそ、「別の可能性もある」と考えられる。
身体を長く任せるなら、こういう人がいい。
取材者として、素直にそう思いました。
悩みが改善したあとも、通い続けている人がいる
その姿勢は、お客様との関係にも表れています。
股関節に痛みがあり、自分なりに運動をしても改善しなかったお客様が、Warpに通い始めて約1か月で状態が改善しました。
そして現在もトレーニングを続け、体力がついたことで生活そのものを楽しんでいるそうです。
最初の悩みがなくなったら、そこで通うのをやめてもおかしくありません。
それでも関係が続いている。
そこには結果だけではなく、
「この人となら、この先も自分の身体を任せられる」
という信頼があるのではないでしょうか。
下里さん自身も、信頼関係を土台にしたうえで、結果を出すことが大切だと話しています。
暖かいだけではない。
誠実に向き合い、そのうえできちんと身体を変えていく。
この両方があることが、Warpの強さなのだと思います。
約10年続けても、根本にあるのは「人の役に立ちたい」
下里さんがトレーナーになる前は、不動産業界で働いていました。
今とはまったく違う仕事です。
そんな中で、「健康」というものは人にとって限りなく良いことだと感じたことが、この仕事を選ぶきっかけになりました。
自身が身体を動かすことが好きだったことに加えて、お母さまがあまり身体が丈夫ではなかったことも、健康について考える背景にあったそうです。
そしてトレーナーになり、お客様から直接「ありがとう」と言ってもらえる。
それが嬉しかった。
もうすぐ10年になる今も、続けないという選択肢は自分の中になかったといいます。
自分の好きな身体づくりを通じて、人の役に立てる。
お客様ごとに悩みが違うからこそ、考えることも尽きない。
それが、今もこの仕事を続けている理由です。
取材を通して聞いた話を振り返ると、「人の役に立ちたい」という言葉が、単なる理念ではないことが分かります。
相手を尊重することも、自分の考えを押しつけないことも、まず安心してもらおうとすることも、すべてそこにつながっています。
最後に、「一度来ていただければ」と言い切った
取材の終盤、下里さんに少し変わった質問をしました。
「自分のジムのことを、思い切り良く言うとしたら何と言いますか?」
ここまで話してきた通り、下里さんは自分を大きく見せるタイプではありません。
そんな下里さんが少し考えて、
「一旦来ていただければ、満足していただけるんじゃないかなと思います」
と答えました。
そして最後には、

「一度体験で来ていただければ間違いないと思います」
と言い切ります。
この言葉が、とても下里さんらしいと思いました。
何でも自信満々に断定する人ではありません。
むしろ身体については「決めつけない」「自分を過信しない」と話してきた人です。
だからこそ、その人が最後に「一度来てもらえれば」と言う言葉には、静かな説得力があります。
約10年、お客様と向き合ってきた経験の中で積み重なった自信なのだと思います。
40代から先の身体を、誰に任せるか
40代以降の身体づくりは、20代の頃と同じである必要はありません。
体重を落とすことだけを目標にするのではなく、仕事を終えたあとにも人生を楽しめる身体や、年齢を重ねても綺麗に元気に動ける身体を目指していい。
そして、長く身体と向き合っていくなら、「どんなトレーニングができるか」だけではなく、誰と身体をつくっていくのかも大切です。
今回、下里さんとお話しした時間は決して長いものではありません。
それでも取材を終えたとき、
暖かくて、誠実で、信頼できる方だな。
という印象が強く残りました。
最近、以前より疲れやすくなった。
これから先のために、そろそろ身体と向き合いたい。
そう思っているなら、一度下里さんと話してみてほしいと思います。
下里さん自身が言っていた、
「一度来ていただければ」
という言葉の意味が、きっと伝わるはずです。
疲れないって、最強だ。
その先にあるのは、トレーニングの記録ではなく、まだまだ楽しめるこれからの人生なのだと思います。